日 時:2026年3月25日(水)
視察先:佐伯広域森林組合(大分県佐伯市宇目大字南田原283番地2)
参加人数:19名
地域共創委員会 林業部会では、例年現場視察会を実施しています。今年度は、再造林率9割、
健全な山の維持と大型製材所の運営を両立させ、2×4用スタッド生産工場を自力で建設した
佐伯広域森林組合を訪問しました。
【視察概要】
①佐伯広域森林組合の概要
佐伯の森林概況: 佐伯市は九州最大の面積を持つ自治体であり、森林率が87%に達する。
かつては広葉樹主体の天然林(薪炭材やシイタケ原木)が中心だったが、
戦後の拡大造林によりスギ・ヒノキの人工林率が50%を超えている。
組合の歩み: 1990年に6つの森林組合が広域合併して発足。木材価格の下落や林業の衰退と
いう危機感の中、民間企業に近い経営感覚を取り入れ、川上(苗木・造林)から
川下(製材・バイオマス)までを一貫して手がける体制を構築している。
②佐伯型循環型林業の取り組み
組合独自の強みとして、以下の項目について説明がなされた。
1. 伐採・造林のワンストップ体制
収益性を考慮して50年での主伐・再造林を行っている。
立木を買い取る際、所有者から「再造林費用」をあらかじめ預かる(積立金方式)ことで、
伐採後の放置を防ぎ、確実に次世代の山を作る仕組みを導入。
2.苗木生産(コンテナ苗)
九州内での苗木不足解消のため、2013年よりコンテナ苗の生産を開始。現在、協議会全体
で年間約41万本(組合単体で15万本)を生産。
地域に適した「品種(飫肥杉等)」を厳選し、植栽後の成長率を高めている。
3. 加工・販売戦略
大径材対策: 人工林の成熟に伴い発生する大径材(太い丸太)の利用先として、2×4
(ツーバイフォー)材の生産している。
外材(SPF)の価格変動に左右されない国産材の安定供給体制を構築。製品の9割以上が
人工乾燥材(KD材)であり、ホームセンターや輸出など販路を多角化している。
4.未利用材の活用(バイオマスチップ)
林地残材の回収: 従来山に捨てられていた端材を買い取り、バイオマスチップとして加工。
山を綺麗に片付けることで次期造林のコストダウンにも繋げている。
③工場視察
・乾燥機は高温乾燥機(50㎥)を11基、中温乾燥機(200㎥)を6基所有している。
・2×4材加工施設は令和8年1月に完成し、現在は試運転中である。5月から本格稼働を
予定している。→JAS認証取得が5月予定であり、JAS認証取得後に本格稼働させる。
・2×4材加工施設の建屋は木造であり、大分県産材を使用している。ただし、補助金は
活用していない。
・ボイラーの燃料として製材端材のほかにバークも使用している。これにより、重油をほと
んど使用せずに乾燥機の熱源を確保できている。
・丸太消費量11万㎥/年、製材品生産量5万㎥/年である。製材品の出荷先は九州内が60%、
関西・中部地方が40%である。
④再造林現場視察
・地拵え、植栽、下刈を同一班で実施させているため、植栽や下刈を効率的に行うために丁
寧な地拵えを行うようになった。
・林地残材もバイオマスチップとして買い取っており、伐採後の現場が綺麗な状態である。
これにより、地拵えの作業性を向上させているだけでなく、鹿ネットを設置する際も効率
的に行えるようになった。
・地域性として森林所有者は、伐採跡地が整理されていない事業者には再度伐採を請け負わ
せることはなく、その話が地域全体にも広がるため自然と伐採事業者が淘汰されている。
・土地込みでの立木買いを依頼されることが増加している。また、保安林率は6割である。
最後に林業部会事業WG角座長(九州木材工業株式会社代表取締役社長)より「佐伯広域森林
組合の取り組みは、川上から川下までの経済循環が完成されており、日本の林業が目指すべき
一つの完成形である。特に『大径材を2×4材として活用する』という逆転の発想と、それを支える
若手人材の確保は、他の地域にとっても大いに参考になる。九経連としても、こうした成功事例
を九州全体に波及させ、需要創出(非住宅の木造化等)をさらに加速させていきたい」と総評を
いただきました。