トピックスTOPICS

「KYUSHU NEXT~われわれはどうやって九州を動かしていくのか~」開催

九州の発展のために何が必要か、どうやって九州を動かしていくのか、幅広い層の意見を取り上げ、九州が目指す未来の形を考える「KYUSHU NEXT」を開催した。

第3回となる今回はWEB開催とし、コロナ禍により見えてきた「九州のニューノーマル」について、「女性活躍」「デジタル化」「地域成長」それぞれの視点から議論を行った。

1.基調講演 「コロナ禍後のニューノーマルな生き方」について(講師:作家 田口ランディ氏)

2015年頃からインターネットの世界にZoomが登場したことで新しいオンラインの時代が始まっていた。今までのツールがテレビ電話の延長であるのに対し、Zoomは複数の人間が対話し、共同作業をするための新しいツールとして登場した。そこにコロナが現れ想定さ れていた未来に我々を早く運ぶ結果となった。 コロナにより地方に移住して、そこでリモートワークを望む人たちが増えてきた。都市で暮らしていた人々が地方に流入することで、地方が活性化する。同時に地方行政のオンライン改革を望む声が高まり、地方行政のオンライン改革が進む。教育においてもオンライン授業が常態化していく。そこで、オンライン教育のレベルによる学校格差が始まる。 オンライン教育の導入は地方行政のよりよい民主化を促す。それは全員が端末を持っているだけではなく、それを授業で使いこなし、次のステージとして地域社会の活性化に役立 てることができるからである。熊本市が教育のオンライン化に成功したのは、震災復興という明確な目標があったからである。子供たちが持っている端末を利用し、教育だけではなく福祉や医療など地域全体をオンライン化して役立てた。そこでは「参加型社会」が実現する。オンラインの有利な点は、移動時間をかけずにオンライン上に集まれること。全員が同じ画面上で並ぶことから、参加者が平等になり、発言がしやすくなる。 ビジネスの面では、オンラインのメリットを生かした新しいビジネスチャンスが生まれている。生産者と消費者が直接結ばれ、誰でも簡単にWEB上で店が開ける。同業他社との競合ではなく、共同のサイトでものを売ることが可能である。さらに地方から全国展開も可能である。 オンライン化にも負の面はある。デジタル化に乗り遅れたことで貧富の差が生じる。また、オンライン化している家の子供とそうではない家の子供の教育格差も生じる。 雇用の面では、仕事が自宅でできることから、時間的制約をあまり受けないことで、障害者、主婦など、これまで就職に制約を受けていた人たちの雇用が生まれる。一方で、リアルの重要性も再認識される。人間的憩いを与える仕事、クリエイティブな仕事、人と人をつなぐ仕事等も注目される。 今後の課題は、コンピュータを使う創造性のある人間教育である。加速するデジタル化を恐れず、みんなで情報を共有し合い、積極的にネットワークを作る。それによって、教育やビジネス、さまざまなジャンルで可能性が開ける。つながりあっていることを知り、ネットワークを活用することが大事である。

 

2.パネルディスカッション

 パネリスト  

  和田金也・㈱岩田屋三越取締役執行役員総務・経営企画部長  

  名村知美・㈱安川電機人事総務部社会貢献推進課長  

  柳瀬隆志・嘉穂無線ホールディングス㈱社長  

  佐々木洋子・福さ屋㈱副社長  

  濱砂圭子・㈱フラウ社長  

  樋口元信・㈱山口油屋福太郎常務取締役  

  萱沼美香・九州産業大学経済学部教授 〈女性活躍の視点〉

 

 コロナ禍が女性活躍へ与えた影響について、2つの事例が紹介された。

 業務フローの見直しや組織改革を実施した結果、業務量が減少し有給休暇取得が増加した等の成果を上げた。そこにコロナが発生したことで、取引先との会食や出張が必須でなくなり、経営に参画するための長時間労働は必要でなくなった(事例①)。

 既にテレワークを導入していたが、それは育児や介護を理由とする保護施策であった。それが、コロナの発生により誰でも使える制度になり、成果を意識した働き方に変化した(事例②)。

 両事例とも、コロナ禍が従来の働き方改革を加速させる結果となり、女性活躍にプラスに作用したことが紹介された。

 また、コロナ禍による休校で夫婦のどちらかが育児を担わなければならない状況が生じたことで男性の意識も変化した。男性が交代で育児を担うという経験は、女性活躍にとって貴重である旨の意見があった。 〈デジタル化の視点〉 内閣府の調査によると、テレワークをきっかけに働く場所について意識の変化が見られる。家族と過ごす時間を保ちたいと考える人が80%を超えており、テレワーク可能な職種の人の多くはこれを継続したいと考えている。 東京から九州へのUIターンについても加速している。コロナ禍により九州での生活の豊かさに気付く。東京には中途の即戦力人材を採用しやすい土壌があるので、九州で必要な人 材を東京に求めることができる。九州で人材を確保するチャンスが訪れたことが発表された。 社内のデジタル化やテレワーク実施ついてはスムーズに移行した会社がある一方で、試行錯誤中の会社では次の課題が挙げられた。

 ①数カ月では運用に慣れることができない。

 ②目的に対する社員の意識の変化が及ばない。

 ③ITツールの業務への落とし込みが足りない。

〈地域成長の視点〉

経済効率優先の企業社会がある一方で、家庭内持ち出しによって支えられた地域社会がある。コロナ禍により企業社会は変革のチャンスを迎えたが、地域社会ではさまざまな問題が生じた。このような中で地域社会を支える取り組み(ドライブスルーふくおか、キッチンカープロジェクト、オンライン両親学級等)が紹介された。また、九州がコロナ禍による地方分散の受け皿になるだけでなく、そこで価値を生み出すことが地域の成長につながる。人々が地域に愛着を持つと、目に見えない何かが生まれることが、商品開発の事例を交え紹介された。 大学教育では、遠隔授業を実施する中でオンラインのメリットを感じる一方、相互性や連帯感の面でオンラインに限界があることが紹介された。大学が超高齢化社会において地域と関わるためにはリカレント教育が重要であり、今後オンラインとリアル双方の良い面を生かしたリカレント教育の重要性が増す旨の発表があった。

入会案内はこちら