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「九州、日タイ交流の扉~過去から未来へ~」

九経連では国際委員会企画部会特別講演として在福岡タイ王国総領事館、ソムチャイ・アンサナンスク領事をお招きして、講演を頂きました。以下にその要旨をお示しいたします。 ◇日タイ関係の歴史  古代アユタヤ時代に遡ること約600年前、琉球王国および長崎との間で、多くの交流・交易があったとされる。タイ王室より高位の貴族の称号を賜った日本人がいたほか、アユタヤ県には日本人村もあったという。沖縄の名産品の一つである「泡盛」は、タイ米を原料としているが、伝達された製法を現在でも受け継がれていることは、その象徴の一つといえるだろう。

◇タイ経済の状況と経済効果  タイにとって日本は、皇室とタイ王室の繋がりから民間分野に至るまであらゆる面での重要なパートナーであり、最大の投資国家である。九州からもTOTOや西日本鉄道等、現在では57社が進出している。また、観光面では、日本人訪タイ数が160万人/年、タイ人訪日数も年間100万人を突破する等、増加の一途を辿っている。タイのGDP成長率は、当初予想よりもs上方修正となる年4%程度の成長を継続的に遂げていく見通しである。その端緒と言える事業の一つにインフラ、交通整備、教育改革等が挙げられる。タイが経済的に発展し続けるための基盤作りを行ってきたこれらのプロジェクトが根底を支えている。今年度も引き続きタイにおける経済政策では「観光産業」「サービス産業」の拡大を重点施策としている。この分野はタイのGDP成長にとって大変重要なキーワードである。一方、タイ国内での均衡を図るべく、農業従事者や低所得者へのケア、中小企業の経営基盤強化に向けた施策も盛り込んでいる。また、タイ投資委員会(BOI)では、海外からの投資への動機付けとして特別税を緩和する等の措置により、過去1年間のEEC(東部経済回廊政策)への投資額が2千億バーツ(約7,200億円)以上となった。これは全投資の3分の1の割合を占めている。

 

◇経済面における今後の重点施策  代表格として挙げられる施策の一つに「タイランド4.0政策」がある。この政策はタイ国内の経済構造改革を通じて、国民の生活水準を高めるために革新的かつ創造的な経済枠組みを目指すものである。特にスマートシティ開発事業において注力する分野は、環境・経済・交通・物流・国民・生活・地方行政の7分野である。タイ政府と民間企業における利便性と迅速性の潜在能力を向上させる目的で掲げた分野である。先駆的にスマートシティ政策を構築している日本には、タイに対する投資と技術交流を図る機会を切望している。 また、EECの政策にも触れる必要がある。タイ東部の経済特区EECは、ロボットやバイオ、ITといった成長が見込める10の分野にわたる産業を誘致するため、インフラ・交通整備に力を入れている。EECへの投資優遇措置として、法人所得税や輸入関税免除等が挙げられ、従来の投資奨励措置と比べて最も優遇されている措置である。タイと日本との間における経済協力は2国間のみならず、近隣諸国(ASEAN地域)へ与える影響も大きいことから、人材育成やIoTに対する投資奨励等、日本経済に対して継続的な協力体制を今後も整備する考えである。 更に地方行政への政策について触れることにする。技術力等の潜在能力が高い日本の地方に所在する中小企業による諸外国での生産・販売を地方レベルで取り組む動きを政府として重要視している。具体的な動きとしては、経済担当であるソムキット副首相が、昨年2月に来九された折に、AIサービスを主軸とするロボット工場を視察。九州域内で展開されているデジタル産業、ロボット産業、食品製造加工等に大変興味を示している。まさしく、タイランド4.0政策と共有する部分が大きいことに由来するものである。 ◇終わりに  タイ政府は九州との絆が様々な面で強くなることを願っている。九州は日タイを繋ぐ扉となる重要な地域であると認識し、大阪に続いて日本で2番目となる総領事館を昨年10月ここ福岡に開設した。来たる11月の総領事館全面オープン、ビザ発給業務開始により、タイビジネスを行う方が、福岡でビザ申請を行えるようになる。引き続き、タイと九州の関係がスムーズになるよう、しっかりと窓口としての役割を果たしていきたい。

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