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ローラン・ピック駐日フランス大使特別講演会

同日開催の2018年度国際委員会企画部会の特別講演としてローラン・ピック駐日フランス大使にご講演いただく。内容は以下の通り。

 

【日仏外交樹立160年の歴史】  1858年に日仏修好通商条約を締結し、両国間の外交関係が樹立され今年で160周年を迎えた。160周年を記念して日本文化を紹介するイベント「ジャポニスム2018」がフランス各地で開催されている。開幕に際して河野太郎外務大臣がフランスを訪問。また、皇太子殿下が2018年9月7日から14日までフランスを訪問するなど、ハイレベルな往訪が相次いでいる。  両国は2013年以来、同じ価値観の共有に基づく「特別なパートナーシップ」によって結ばれており、多国間主義の強化、気候変動対策、テロとの闘いを重視することで一致している。 【日・EU経済連携協定(EPA)】  日本はフランスにとってアジア第2位の貿易相手国であり、両国間の貿易総額は年間160億ユーロに及ぶ。また、日本はアジア最大の対仏投資国であり、その金額は累計で160億ユーロに及ぶ。ただ、日本からの投資額でフランスは19番目の投資国でしかない。  2018年7月17日に日・EU EPAが署名され、フランスのみならずEU域内企業にとって様々な可能性が生まれた。関税の引き下げ・撤廃のみならず、様々な非関税障壁の撤廃が見込まれる。この協定により世界GDPの約3割、人口規模6億人超の世界最大の自由貿易圏が形成される。 【マクロン大統領の誕生】  2017年5月14日エマニュエル・マクロン氏がフランス共和国大統領に就任した。マクロン大統領はEU域内のみならず、国際社会の中でその存在感を示すべく、世界に開かれた国になることを提唱した。そのために改革を進めることを宣言し、成果の出る改革を望んでいたフランス国民から信任された。 【財政改革】  EU加盟国には、財政赤字を対GDP比3%以内に収めることが義務付けられている。2017年度フランスの財政赤字は対GDP比2.6%まで縮小し、その基準を2007年以来10年ぶりに達成した。今後EU内で信頼を取り戻し、フランスの発言力を高めるためにも更なる赤字幅縮小に向けた努力を継続する必要がある。 【労働市場改革】  マクロン大統領が就任して4か月後の2017年9月に労働法の改正が行われた。これまで労使交渉の際、業種別の労働協約を優先する原則が存在した。この改正により企業別での労使協定を優先することが可能になり、企業側と雇用側が直接交渉することが可能となった。  また、解雇手続きの簡略化も行なわれ、結果として企業は企業業績に応じた弾力的な雇用を実現することが出来るようになった。 【税制改革】  法人税の減税が行なわれており、現行の33%から段階的に2022年までに25%に引き下げられ、2025年までにはEU域内平均よりも低水準となる見込み。また、先端技術・研究開発・イノベーションに積極的な取り組みを行なう企業に対する税制優遇措置について税額控除が可能となった。  この他にも高所得者に対する減税、社会保障費の減税等も実施されている。また、より一層の投資を促すため「エグジット・タックス」の廃止を検討している。これにより海外で行う事業から産み出される付加価値について課税適用外となる。このように複雑すぎると批判されていたフランスの税制に対し様々な改革が実施されている。 【改革の成果】  このように、これまで成し得なかった大胆な改革を実施しているにも関わらず、国民から大きな批判の声が挙がっていない。当面は安定した政権運営が可能な状況であることから具体的な成果を積み重ねる必要がある。  財政赤字の数値目標をクリアしたこともそうだが、特に海外からの投資が増加している。今般、トヨタのフランス工場も4億ユーロ相当の追加投資を決定した。 【最後に】  フランスが改革を進める中で求めているものは、共通した価値観、自由・人権・法の支配等に基づいた国際秩序を築くということである。各国は世界が繋がっているということを認識したうえで責任ある行動が求められている。そして各国は他の国々と連携することで国際社会を運営していかなければならない。その必要性が現在まさに重要視されている。  来年2019年は日本がG20の議長国、フランスがG7の議長国を務めるという重責を担うことからも連携がより一層強化されなければならない。G20財務大臣・中央銀行総裁会議が福岡で開催され、九州の方々もそうした物事が決まるという瞬間に立ち会うことになるだろう。

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